今回は私自身の体験と、私のすぐ身近で起こった出来事を通じて、実感として理解されたことをお伝えいたします。

まず、私自身が当事者である体験ですが、それは大学卒業後に勤めていた学習塾においての出来事でした。

その当時私の出勤時間は午後1時だったのですが、きちんと1時に出勤しても、塾長先生が職場である教室に現れるのは、30分かあるいはそれ以上経過してのことであり、その日の仕事自体が塾長先生の指示によって決定するような形になっていましたので、何もせず、ただ待っているのために定時に出勤する必要もないような感じになり、1時を5分から10分位過ぎるような出勤になってしまっていました。

そのような状況になっていたある日、塾長先生からそのような私の出勤状況に対して、改まって話をするために、呼び出されたのでした。もちろん社会人の常識として、雇って頂いているいる以上、どんな状況であれ、出勤時間を守ることが正しいことであると理解していましたので、どうお叱りを受けてもそれを受け入れ、今後は時間を守ろうという思いで塾長先生に対面しました。

その時の詳しい話の展開は覚えていませんが、塾長先生は当時流行っていたテレビ番組の「笑っていいとも」を見終わってから、準備して3階建ての自宅の1階にある教室に降りてくるということを述べられ、私も同番組を見ているということをお話しすると、「そういうことなら、今度から気をつけてくれればいいよ」というような、軽い和やかな感じで話は終了しました。

話の初めは、塾長先生も怒っているというか、気合の入った様子で、真面目に私の出勤状況についてお話を始められたのは覚えているのですが、どこでどう「笑っていいとも」の話になり、何事もなかったように和やかに終わることにつながっていったのか、今は全く覚えていません。しかしとにかくその時、全く叱責されたという感じは受けずに終わったという感じは覚えています。

私にとってはこのことと同様の意味を持つ出来事であると共に、よりハードな私のすぐ身近で起こった出来事は、次のようなことでした。

それは上記の出来事よりさらに以前のことで、私が浪人中に勤務していたアルバイト先の喫茶店での出来事でした。その当時私はその喫茶店のウェイターをしていたのですが、私より少し年上の厨房で働く調理士のAさんと、私より少し若かったウェイトレスの女の子が交際している状況にありました。しかし私と同年齢の新人調理士のBさんがそのウェイトレスさんと恋仲になり、Aさんとのいわゆる三角関係になってしまったのです。

初めはAさんにはBさんとウェイトレスさんのことは秘密にされていたのですが、ある日、そのことがAさんに知られてしまったのです。それは、1日の仕事が終わった夜の10時以降のことだったと思いますが、従業員みんなで店に残って何かの理由でささやかなパーティーのようなものを開いている時でした。

自分と交際しているウェイトレスさんがBさんとつき合っているということを知ってしまったAさんは、怒りのあまり、厨房から包丁を持ち出し、Bさんに突きつけ、恐れて逃げ出すBさんを店中、追い掛け回すという事態に及びました。私や他の従業員の方たちでBさんを安全な店の外へ逃がし、Aさんを引き止めて、落ち着くように説得したのですが、一歩間違うと誰かが包丁によって傷つけられる可能性もあるような緊張した場面となっていました。

しかし時間と共にAさんも落ち着きを取り戻し、包丁を手放した上で、Bさんと二人で話がしたいということだったので、二人だけで話をする機会を設け、私達は心配ながらも邪魔にならぬように、二人の話が終わるのを待っていました。

どのくらいの時間が経ったのかは覚えていませんが、やがてAさんとBさんの話が終了し、二人は私達の前に姿を現したのですが、驚くべきことに、そして喜ばしいことに二人ともすがすがしいような笑顔をしており、話し合いの前の緊張感など嘘であったかのような感じさえしていました。話の詳しい内容はわかりませんでしたが、結論としては、そのウェイトレスさんは、Aさんとはお別れし、Bさんと付き合うようになったように覚えておりますが、その後AさんとBさんの関係は以前と同様の仲の良い先輩と後輩として問題なく維持されていましたので、この話し合いはとても有意義なものだったと思われます。

以上のような私自身に関することと、私のすぐ身近で起こったことの2つの出来事を通して、私にとって実感としてとてもよく理解されたことは以下の様なことでした。

それは他の人による自分にとって受け入れ難い行為を目の当たりにした時、その行為自体の是非よりむしろ、その行為の背後にあるその人の自分に対する思いこそが、その行為を受けた人にとっては重要なことであるということです。

私自身の体験に関しては当時の塾長先生は、私の出勤時間の遅れよりも、そのような状況になっている私自身の仕事あるいは塾長先生に対する思いや考えに対して不信感を持たれたのですが、私と対面し、そのことについて話し合うことによって私自身が決して仕事や塾長先生に対していい加減な気持ちでいたわけではないと感じられ、安心し、その結果私の勤務状況自体は大きな問題ではなくなったのではないかと、考えられます。

また私のアルバイト先での出来事においても同様に、Aさんは自分の交際相手であるウェイトレスさんとBさんがこっそりつき合っていたという行為に加え、その際のAさんに対するBさんの思いがどのようなものかということに関する不信感が、その怒りに油を注いだのではないかと思われるのです。

ですから、Bさんと腹を割って話が出来た後、Aさんは自分に対するBさんの思いが決して自分をバカにしたり軽く見ているのではなく、先輩として尊敬し、信頼しているということが感じられたので、Bさんとウェイトレスさんのことを許す、おおらかな優しい自分を取り戻すことが出来たのだろうと、私には感じられるのです。

これらの出来事を思い出す時、対面して話し合うことの大切さを私は実感させられるのです。