「生徒さんに教えられたこと 前編」は、こちらから

その時の会話において、私は大学入試合格をお祝いする言葉と今までの努力へのねぎらいの言葉などを述べた後、前編で書かせて頂いたような3年間におけるA君への指導に対する思いの変化、つまり初めはA君の英語学力の質に対して懐疑的であったが、次第に認めざるを得なくなり、今では立派な英語学力が身についていると完全に認めているということを述べさせてもらいました。

その流れの中で、私が直接指導していた部分以外でどのように英語学習を進めてきたのかも尋ねさせてもらいましたが、以下がその内容でした。

まずA君の英語学習スタートは中学1年の学校の授業からということであり、最初からよく出来たわけではなく、その真逆に中1の1学期から全く学校の英語の授業についていけていない状態だったということです。

そんな状態の中、私がA君を教えた英語専門塾の同系列の他教室に通い始め、中1の夏休みに塾主催のキャンプに参加したということでした。そのキャンプは普段塾で学習している英語表現を使ってネイティブスピーカーの人達と屋内外でゲームしたり、会話したりすることが中心の内容となっていました。A君はそのキャンプが超がつくほど楽しかったということで、その時に英語の楽しさに目覚めたということでした。

そこまで話を聞いた時私はなるほどと納得し、それがきっかけで英語が好きになり努力し始め、塾の指導との相乗効果で英語が得意になったのだと思い、A君にその様に述べました。ところがA君の返答には、予想外の内容が含まれていました。

それは、夏のキャンプで英語が好きになったのはその通りだが、その後特別何の努力もしていないということでした。つまりA君は、英語が好きで好きでたまらなくなった中1の夏以降、学校の授業の英語も、塾で学習する英語も楽しくて仕方ないという感じで取り組むようになり、気が付けば非常に英語が得意になっていたということなのです。ですからA君本人としてはとても好きなことを好きな思いにかられてやってきただけで、「努力した」という自覚は全くないというわけなのでした。

さらに色々と聞いていきますと、学校の教科書にしても塾のテキストにしても、A君にとっては勉強というニュアンスの義務的な行為のためのものではなく、何度も読み返してしまうほど、楽しく感じられる貴重な物であったということでした。

さらに私がA君を教えていた英語専門塾は文法や読解だけではなく、リスニングや発話トレーニングなども行う総合的な英語学習の場であったので、A君の英語力も学校のテストや入試への対応力を超えたものになっていて、高2の時だったと思いますが、学校からイギリスに短期の語学研修旅行のようなものに行った際、アメリカなど他国の生徒も合同の英語でのスピーチコンテストで入賞したということもありました。

その様なことを考慮に入れて総合して考えると、A君の場合、英語が好きだという気持ちが英語学習の全ての要素を無理なく、ムダなくどんどんA君に吸収させたのだと私には思われました。

それは幼い子供さんでも、私から見れば非常に複雑で難しいロールプレーイングのテレビゲームなどを楽しみながらどんどん上達していくのと同じような現象のように思われました。また文法的理解が乏しいのにもかかわらずA君が文法問題に正解できるのも、子供さんがロールプレーイングゲームの仕組みを理論的にはよくわからないまま、どんどんやりこなしていくのと同じようなことであるような気がしたのでした。

以上の様なことから私がA君から教わったこととしては、「好きこそ物の上手なれ」ということわざの正しさだったと言えます。もちろんA君のような現象は相当その対象が好きでないと起こらないことではありましょうが、無条件に何かを好きになり、その気持ちがエネルギーとなってその人を大きく成長させることを目の当たりにさせてもらい、私は一人の人間としても、学習指導者としても、当時とても大切なことを学ばせてもらったと思っています。また現在のカウンセラーとしての人間観にも前向きな影響を与えてもらっていると感じられ、A君との出会いに改めて感謝を感じている次第です。