青年は自分の心のつぶやきを神様に聞き取られたように感じ驚きましたが、心を落ち着かせて神様の話に耳を傾けたのでした。

「わしが与えたのは両方の世界とも同じ食べ物の入った大どんぶりと、そこに架かっている梯子だけじゃ。あとは食べ物がなくなれば、新しい物を補充する仕組みを同じように創ってあるのじゃ。ところがお前が地獄だと思った最初の世界の住人達は、先に他の者にどんぶりまで登られると食べ物を全部奪われるのではないかといういらぬ疑いを持つ者ばかりで、順番に梯子を登るどころかお互いに蹴落とし合うことになり、そうしているうちにどんぶりの中の食べ物も腐ってしまうというわけじゃ。

一方お前が天国だと思った、今見た世界の住人達は他の者に対して疑いや不信感がないので、協力し合って梯子を石の階段に作り変えたり、食べ物もいつもみんなに行き渡るような状況に自然となっておるのじゃ。わしにとってはどちらの世界の住人達も同じようにわしから生まれた大切なお子達なので差別などしておらず、地獄のようになってしまっている世界の住人達のことも心を痛めながらいつも見ておるが、自分で自分を苦しめていることに自ら気付かねば、何を言っても聞く耳を持たぬ者ばかりなので気長に様子を見守っているのじゃ。どうじゃ、これでわかったかのう?」

これを聞いた青年は目から鱗が落ちたように納得して「ひょっとするとこのことは、私達が生きている間のこの世界でも起こっていることなのではありませんか?」と神様に尋ねました。

すると神様は「おお、さすがわしが見込んだ人間じゃ!やはりお前は面白い奴じゃのう。またきっと会おうぞ」と言って忽然と消え去りました。                                           おわり