しかしこの天国らしきところにある大きなどんぶりに関しては、先ほどの地獄のどんぶりとは違って、その中の食べ物は腐っておらずとても新鮮で美味しそうであり、また地面からどんぶりに架かっているのは細い梯子ではなく、しっかりとした丈夫そうな石で出来た階段だということが、青年には見て取れました。

しかしその階段も一度に何人も通れるものではなかったので、この世界の人達は順番に並んで階段を登って行き、どんぶりの中の美味しそうな食べ物を手にしては、反対側の梯子からゆっくりと降りて行っていました。そしてその人達が得た食べ物を見ると、そんなに多い量ではなく、なんとかその人の一食分という感じでありました。そんな中で青年が特に感心したのは、誰も階段を登っている間、慌てたりイライラしたりしている人がおらず、皆落ち着いているということであり、その様子を見て「やはり、ここが天国か。間違いなさそうだな」と青年は思わずつぶやいていました。

すると突然神様がまた現れて、「どうじゃ、よくわかったか?」と言うのでした。「はい、でも…」と青年が歯切れの悪い返事をすると、「何か疑問があるようじゃな。何でも尋ねてもよいぞ」と神様は言いました。それに対し「はい。では失礼を承知で申し上げます。神様はなぜ天国と地獄という正反対の世界を創られたのですか?いくら生きている間に悪いことをした人達だって、あんな腐った食べ物しか入っていないどんぶりを与えるなんて酷すぎると思うのですが」と青年は問いかけました。

すると神様はその光をさらに強く輝かせながら言いました。「神に向かって、よくぞそこまで自分の思ったことを言えるとは、やはりお前はわしが見込んだ通り面白い人間じゃな。では答えてやろう。まず第一に、わしは天国やら地獄やらというような相反する世界など創ってはおらんのたぞ」

青年は神様のその言葉を聞いて「では今見てきた世界は、一体何なんだ?」と心の中でつぶやいたのですが、神様にはそれが伝わっているようで、「まあそう焦らず、わしの話を聞くのじゃ」と言って、話を続けました。         つづく