地球のあるところに、心がいつも清く純真な青年がいました。宇宙全体に偏在していて宇宙の全てに気付いている神様は、その青年のことをずっと注目していたのですが、とうとうその青年の前へと姿を現しました。

「わしはお前達地球人が言うところの神じゃ。お前のように心が澄んでいる人間は、地球には珍しい。面白そうなので退屈しのぎに、お前の望みを叶えてやろう。何なりと言うてみい」

青年は一瞬驚きましたが不思議と恐ろしく感じることなく、むしろ安らかな気持ちになるのを感じながら答えました。

「神様が本当にいるのかどうか考えたこともありませんでしたが、卵のように丸いその光輝く姿を見ているとすごく穏やかな気持ちになりますので、あなたを信用してもよさそうですね。しかし仮に何でも叶えてもらえるにしても、私には特に望みはありません。今のままで十分満足して生きています」

「そう言うとはわかっておったが、そういう欲のない人間の望みこそが神として叶えがいのある望みなのじゃ。富や名誉などお前には興味がなかろうが、何か疑問に思うことや知りたいことがあるのならどんなことでも知ることが出来るのじゃぞ」

神様にそう言われた後、少し考えてから青年は口を開きました。

「神様がいるということは、人間が死んだ後に行くと言われている天国と地獄というものもあるということでしょうか?もしあるのなら、どんな所か知りたいと思います」

「おお、なかなか良い望みじゃ。叶えてやろうぞ」

そう言うと神様は突然消え去り、その代わり青年の前にはごつごつした岩山だらけの薄暗い場所が現れました。そしてその場所の真ん中にはプールのように巨大などんぶりがあり、中には食べ物も入っているのが見えましたが、そのどんぶりにはなんとか人間が一人だけ登れるくらいの細いはしごが地面から架けられていました。

その巨大どんぶりのところでは、青白くやせ細った人達が我先にとはしごを登ろうとして、先に登っていく人の足を引っ張ったり、後から登ってくる人を蹴落としたりする状況が見られたのでした。そして青年がずっと見ていると、結局ほとんど誰も食べ物の入ったどんぶりの口のところまで行けず、途中で地面に墜落してしまう有様でした。その上驚いたことに、そのどんぶりの中の食べ物は腐っていて悪臭が漂ってきており、たとえどんぶりの口までたどり着けても、とても食べられるようなものではありませんでした。

青年はこの光景を見て「これが地獄なのか。ひどい所だなあ」と、思わずつぶやいていました。すると突然また神様が現れ「どうじゃ、よくわかったか?」と言うので、「はい、とてもよく」と青年は答えました。するとまた神様は消え去り、青年の目の前の世界もまた一変して、今度は明るくて辺りに美しい花がいっぱい咲いている場所が現れました。

「ここが天国というわけだな。地獄とはやはり違って、素晴らしい所のようだ」と青年は思いましたが、ふと前方を見ると何と驚いたことに、ここにも地獄と同じような巨大などんぶりが存在しているではありませんか。       つづく